エセ文庫
『金魚撩乱』
岡本かの子
著
引用
ああ、真佐子にも、神魚華鬘之図にも似てない...それよりも...それよりも...もっと美しい金魚だ、金魚だ
あたしですの。あたしは多少美しい娘かも知れないけれども、平凡な女よ。いずれ二三年のうちに普通に結婚して、順当に母になって行くんでしょう
あなたは金魚屋さんの息子さんの癖に、ほんとに金魚の値打ちをご承知ないのよ。金魚のために人間が生き死にした例がいくつもあるのよ
この愛魚家は当時において、ほとんど狂想にも等しい、金魚のあらゆる種類の長所をよりあつめた理想の新魚を創成しようと、大掛りな設備で取りかかった。
その頃、崖邸のお嬢さんと呼ばれていた真佐子は、あまり目立たない少女だった。無口で俯向がちで、癖にはよく片唇を噛んでいた
ちっと女らしくなれ。お転婆!
復一さんは、どうしても金魚屋さんになるつもり
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